急速充電の速さは「充電器・ケーブル・本体」の一番弱いところで決まる

スマホの充電速度は、充電器(電源アダプタ)、ケーブル、スマホ本体の3つのうち、最も性能が低いものに合わせて決まります。本体が30W対応でも、充電器が5Wしか出せなければ5Wでしか充電されません。逆に充電器が65W対応でも、本体が20Wまでなら20Wを超えて流れることはありません。急速充電では、充電器と本体が通信して、両方が対応している範囲で最も速い条件を選ぶからです。

この通信のルールにあたるのが、後で説明するUSB PDなどの規格です。先に用語どうしの関係を整理しておきます。W数は「速さの量」です。USB PDは「有線で速さを決めるための共通ルール」、Qi/Qi2は「ワイヤレス充電の共通ルール」です。USB-Cは「差し込み口の形」の名前にすぎません。口の形と中身の規格は別物で、ここを混同すると充電器選びで失敗します。

部品見る場所確認する表記
充電器本体の側面や底面の小さな印字、商品ページ「USB PD」の記載、「9V⎓3A」など複数の電圧が並んだ出力表記、合計W数、PSEマーク
ケーブルパッケージ、商品ページ「USB-C to C」、「3A」「5A」、「60W」「240W」などの対応W数
スマホ本体メーカー公式サイトの仕様表「最大○W」、「USB PD」「PPS」、ワイヤレスなら「Qi」「Qi2」

W(ワット)数:電圧×電流で決まる充電の速さ

W数は、1秒あたりに送れる電力の量です。電圧(V、ボルト)×電流(A、アンペア)で計算します。5V・2Aなら10W、9V・3Aなら27Wです。数字が大きいほど短い時間で充電できます。

注意点が2つあります。1つめに、表示されるW数は「最大値」です。常にその速さで充電されるわけではありません。電池残量が少ないうちは速く充電し、80%前後を超えるとバッテリー保護のために本体が速度を落とします。2つめに、口が複数ある充電器では、表示W数が全ポートの「合計」の場合があります。合計65Wの充電器にノートPCとスマホを同時につなぐと、それぞれに配分される出力は少なくなります。

USB PD:USB-Cで急速充電するための共通規格

USB PD(USB Power Delivery)は、USB規格を定める業界団体USB-IFが策定した給電の規格です。充電器とスマホがケーブルを通じて通信し、「何Vで何Aまで流すか」を決めます。iPhoneの有線急速充電も、多くのAndroidスマホもUSB PDに対応しています。そのため、メーカーをまたいで充電器を使い回しやすくなっています。

USB PDには、電圧を細かく調整できるPPS(Programmable Power Supply)という機能があります。Galaxyの一部機種の「超急速充電」はPPS対応の充電器が必要です。USB PD対応でもPPS非対応の充電器では、その速度になりません。充電器の出力表記に「PPS」の文字や「3.3-11V⎓3A」のような幅のある電圧があれば、PPS対応と判断できます。

このほか、OPPOの「SUPERVOOC」やXiaomiの「HyperCharge」のような、メーカー独自の急速充電規格もあります。これらで最大W数を出すには、多くの場合、同じメーカーの対応充電器と付属ケーブルが必要です。本体がUSB PDにも対応していれば、一般的なUSB PD充電器でもUSB PDの範囲の速度で充電できます。

「USB-Cなのに急速充電にならない」ときの3つの原因

USB-Cの口がついていても、USB PDに対応しているとは限りません。急速充電にならない原因は、充電器・ケーブル・本体のどこかにあります。

充電器がUSB PD非対応、または出力が足りない

充電器の印字で、出力が「5V⎓3A / 9V⎓3A / 15V⎓3A / 20V⎓2.25A」のように複数並んでいれば、電圧を切り替えられるUSB PD対応の可能性が高いです。「5V⎓2A」のように1つしかなければ、急速充電には対応していません。パッケージや商品ページに「USB PD対応」と明記されているかもあわせて確認してください。

ケーブルが対応していない

USB-Cケーブルにも流せる電流の上限があります。一般的なUSB-C to Cケーブルは最大3A(20V時に60W)まで流せます。内部に識別チップ(e-Marker)を持つケーブルは5A(100Wや240W)まで流せます。スマホの急速充電は多くが60W以内に収まるため、通常は3A対応のケーブルで足ります。よくある落とし穴は、片側がUSB-A(従来の長方形の端子)のケーブルです。USB-A側ではUSB PDが実質的に使えません。そのため、充電器がUSB PD対応でも急速充電にならないのです。

本体側が速度を抑えている

本体が熱いとき、充電しながらゲームや動画撮影をしているとき、残量が80%を超えたときは、本体が自動で速度を下げます。iPhoneの「バッテリー充電の最適化」やGoogle Pixelの「アダプティブ充電」のように、就寝中はあえてゆっくり充電する機能もあります。部品の組み合わせに問題がないのに遅いときは、まずこれらの条件に当てはまっていないかを確認してください。

Qi/Qi2:ワイヤレス充電の規格と有線との違い

Qi(チー)は、業界団体WPC(Wireless Power Consortium)が定めたワイヤレス充電の規格です。充電パッドにスマホを置くだけで充電できます。旧来のQiは5Wが基本で、拡張仕様に対応していれば最大15Wまで出せます。Qi2はその後継です。AppleのMagSafeをもとにした磁石による位置合わせを取り入れており、置く位置がずれにくくなりました。位置ずれによる速度低下や発熱が起きにくいのが利点です。Qi2の最大出力は当初15Wで、その後、最大25Wの「Qi2 25W」も登場しています。

ワイヤレス充電は有線より電力のロスが大きいです。同じW数の表示でも、有線より時間がかかり、熱も出やすくなります。Androidには、本体に磁石を内蔵しない「Qi2 Ready」という形の機種もあります。この場合、Qi2充電器に吸着させるには磁石入りのケースが必要です。

ワイヤレス充電器を使う場合も、パッドに電力を送るUSB PDの電源アダプタが必要です。アダプタが付属しないパッドは多く、指定より低いW数のアダプタをつなぐと、パッド本来の速度は出ません。ワイヤレスでも、「電源アダプタ・充電パッド・本体」の一番弱いところで速度が決まります。

場面別:表示とスペック表で見るべき場所

本体は○W対応なのに充電が遅い

まず、メーカー公式サイトの仕様表で、本体の最大W数と対応規格(USB PD、PPS、独自規格名)を確認します。iPhoneのように、W数ではなく「○W以上のアダプタを使用した場合、○分で最大50%充電」と書くメーカーもあります。その場合は、記載されたW数以上の充電器を用意します。次に、充電器の出力表記がそのW数に届いているかを見ます。最後に、ケーブルがUSB-C to Cで3A以上に対応しているかを確認します。3つとも条件を満たしていて遅いなら、発熱や残量など本体側の条件が原因です。

家にある古い充電器は使い回せるのか

充電はできますが、速くはならないことが多いです。USB-Aの口しかない古い充電器は、出力が5V⎓1A(5W)や5V⎓2.4A(12W)程度のものが多く、USB PDの急速充電には対応していません。Androidの一部機種は、QualcommのQuick Chargeに対応したUSB-A充電器なら速く充電できる場合があります。就寝中に充電する用途なら、古い充電器でも困ることはほとんどありません。急速充電したいなら、USB-Cの口を持ち、出力表記に複数の電圧が並ぶUSB PD充電器を選んでください。

安全面では、充電器にPSEマークがあるかを確認します。PSEマークは、電気用品安全法の基準を満たした製品に付く国内の表示です。ACアダプタには表示が義務づけられています。マークのないもの、ケースが膨らんでいるもの、異常に熱くなるものは使わないでください。

新しく充電器やケーブルを買う

本体の最大W数以上で、USB PDに対応した充電器を選びます。Galaxyの超急速充電を使いたいなら、PPS対応も条件に加えます。ノートPCやタブレットと共用するなら、合計W数だけでなく、ポートごとの出力配分を商品ページで確認してください。ケーブルは、パッケージに「60W」「240W」など対応W数が書かれたものを選ぶと判断しやすくなります。

購入前に確認する順番

迷ったら「本体の仕様表 → 充電器の出力表記 → ケーブルの種類」の順に確認します。3つの数字のうち、最も低いものが充電速度の上限です。対応規格やPPSの要否は機種ごとに異なり、同じメーカーでも世代によって変わります。購入前には、スマホメーカー公式サイトの仕様ページと、充電器メーカーが公開している対応機種の情報を照らし合わせてください。価格やセット販売の内容も変わりやすいため、購入時点の公式情報で確認してください。